Introduction by Chris Kornman
紹介 by クリス・コーンマン

ガツギ工場(別名:水洗処理場)は、アバーディア山脈の東端にあるニエリ市南部に位置しています。 ここで生産されるコーヒーは、山岳地帯の肥沃な土壌の恩恵を受けています。

このロットは、オタヤ農協の小規模農家たちによって育てられ、ニエリ郡周辺の約20箇所の水洗処理場から集められています。ニエリ郡の西側はアバーディア山脈に接し、北東はアフリカ全土でキリマンジャロに次ぐ最高峰の一つ、ケニア山に接しています。

ニエリのコーヒーは、その優れた品質のために高く評価されています。そのため、近年の知事は地区の輸出の全支配権を握ろうとしたほどです。優れたコーヒーが政治的な理由で倉庫に放置されるという不幸な過去はありましたが、この地域のコーヒーは再び市場へと持ち込まれるようになりました。

ガツギ工場は、小規模農家たちから豆を調達しています。ケニアでは一般的に生産量の目安として、土地の大きさではなく木の数を数えますが、 多くの場合、農場あたり平均250本のコーヒーの木しか保有しません。 多くの農家が地域の作物の多様性と収穫の安全性を向上させるため、コーヒーに加えてバナナ、グレビレア、マカダミアの作付けを行っています。 ガツギ工場は1979年に海抜約1860mの場所で建設され、近くの舗装された道路から簡単にアクセスできます。近くにはカリマと呼ばれる小さな森があり、今は枯渇してしまいましたが、かつては神聖な川のほとりでした。

1-p1020425

Green Analysis by Chris Kornman
生豆に関する考察 by クリス・コーンマン

ケニアのコーヒーは、英国の選別方法によって格付けされ、グレードによってアルファベットが割り当てられます。 AAは豆のサイズが大きく最も高いグレード(実際にはEグレードの豆のほうが大きいが、これらはより低い値で取引される)であり、ABはその次に大きなサイズとなります。各付けによると、このロットは98%がスクリーンサイズ18以上であり、豆のサイズが大きくかつ均一となっています。 ケニアほどの精密なスクリーンサイズ測定は世界でも他に類を見ません。 また、品質に関連して密度の高さにおいてもケニアの豆は群を抜いています。

このロットはケニアの一般的な品種が混ざったものです。 SL-28とSL-34は、今は無くなってしまったケニアのスコット・ラボラトリーズという、現在はより大きなケニア農業畜産研究機関の一部である国立農業研究所によって生産された、最も評価の高い品種の2つです。どちらの品種も、異なる系統からのものではありますが、ブルボン由来の品種となります。

SL-28は、元々タンガニカ(近年ではタンザニアの一部)で栽培されていた干ばつ抵抗性品種から開発されました。この品種は一般的に最高品質であると考えられていますが、市場で取引される他のアラビカ品種と比較すると収穫量の低いものとなっています。

SL-34は、カベテ地方の近隣で発見されたケニア品種の突然変異です。これらのSL変異体は、どちらも新芽の葉先が銅色になっています。Ruiru-11は、スーダンルーメ(高品質)とカチモール(病害抵抗性)という異種品種同士の交雑により、SL-28をより生産的かつ耐病性にする試みの結果、1980年代半ばに生まれた新しい品種です。

Roast Analysis by Jen Apodaca
焙煎における考察 by ジェン・アポダカ

今回の豆は、コーヒーのプロセス方法(ウォッシュドやナチュラル)にかかわらず、すべて高密度でした。これにより、最初の爆ぜ(ハゼ)後に温度上昇の勢いが急減速してしまいました。最初の焙煎(焙煎コード:PR-356)における1ハゼ後の焙煎時間の長さは、豆の高密度さを物語っています。

これを是正するために、我々は1ハゼの直後に熱量を増加させることにして、温度の上昇を観察しました。温度上昇が勢いを増すにつれて、加える熱量を調整したところ、1ハゼ後の焙煎時間を46秒短縮し、2分以内に抑えることができました。結果として、典型的な干し黒ブドウの酸味、甘いプラム、砂糖漬けのチェリーとジューシーなオレンジといったフレーバーをカッピング時に楽しむことができました。

gatugi2

Brew Analysis by Chris Kornman
抽出における考察 by クリス・コーンマン

私はこのコーヒーを、我々の仲間内では標準的な「Dueling Chemex」という方法にて淹れてみました。ほぼ同じ2つの抽出レシピで、わずかに異なる結果となるものです。 私とリチャード、ジェンの3人は全員2番目の焙煎(PR-357)のほうが良いと感じましたが、それはカッピングの時とは異なる理由でした。

最初の焙煎(PR-356)は、焼きフルーツやドライフルーツに加えてチョコレート、塩キャラメルのフレーバーが感じられました。しかし、香りが強く、ブラックベリーとカラントがふんだんに感じられ、明るくクリーンで典型的なケニア感のあるPR-357と比べると、少しフラットでトースト感が否めません。

いずれの場合も、コーヒーの抽出に時間がかかり、可溶性が高いことが判明しました。豆を粗くグラインドしたり、より速く抽出する方法を組み合わせることより、よりエレガントな仕上がりが期待できるかもしれません。朝が少し苦手な私にとって、早朝からの抽出作業で少し我慢強さに欠けたかもしれませんが、それでも十分に楽しいコーヒーでした。